ROBO 80's/Fang of the Sun DOUGRAM

ROBO 80's / 太陽の牙 ダグラム


■リアルロボットが熱い熱い80年代の作品群の一つ「太陽の牙ダグラム」です。舞台がほぼ砂漠や荒野なので体感的にも熱そうなアニメでした。

「太陽の牙ダグラム」は機動戦士ガンダムが終わった後に同じ製作会社で作られた作品。「更にリアルなロボットを造ろう」として出来たせいか、ダグラムには顔がありません。代わりにヘリコプターのような全天候型の風防が載ってます。
当時はロボットでも目や口があるのはお約束、下手すると口が動くことも。主役メカで全く顔が無いのは初めてでした。

※左はダグラムの初期案。顔や武装が違う。

しかも更にリアルさを醸し出す為か、劇中のロボットの呼び名が個別の商品名じゃなくてメーカー名で呼びます。なので違う型のロボットであっても同じメーカーなら呼び名が同じになります。要するにロボット名を「ベータ」や「VHS」ではなく、「ソニー」や「パナソニック」と呼ぶようなもんです。

そしてロボットにも劇中では語られない開発背景が各々設定されており、「使い物にならないロボだがメーカーが政治のコネを使ってゴリ押し採用させた」「ライバルメーカーを出し抜く為に敵ダグラムの設計図を極秘入手して開発」と無駄に凝ってます。
また「高額な兵器は古くなっても運用される」というコトも表現。劇中で新兵器が開発されて旧型になったロボは辺境に配置換えされるなど、存在を忘れられずに終盤まで活躍するので兵器感も増し増し。

ダグラムの世界ではロボットを「CA」と呼びます。決してスッチーの「キャビン・アテンダント」の略では無く、「コンバット・アーマー」の略称となってます。

当時はガンプラブームの恩恵もあってプラモデルが売れに売れたらしく、ダグラムは全75話と1年半に渡って放送されてました。

今回の太陽の牙ダグラムのDVDは11巻セットで購入。したんですが、一巻当たり5話収録されてても、全75話なので途中までになってます(11巻だと55話迄でした)。

※ダグラムDVD11巻まで。DVDパッケージアートが素晴らしいです。

ダグラムは舞台背景やストーリーも色々と衝撃的でした。

ダグラムは地球と植民惑星との独立戦争が話の背景。舞台はほぼ植民惑星デロイア上で、宇宙空間での戦闘は皆無。SFなのに全編砂漠とジャングルでのゲリラ戦が殆どです。

ロボット以外の兵器で未来っぽいのは脚の生えた戦車くらい。他に登場するヘリコプターや戦車は現代兵器に近い姿で、何故かジェット戦闘機は登場しない。武装は実弾やミサイルでビーム兵器は存在しません。

作られた年代が80年代のせいかも知れませんが、未来世界なのに携帯電話が有りません。ポケベルが鳴らなくて、普段の生活の通信手段は固定電話機(さすがにプッシュホンですが)、その代り現代日本と違って街中に沢山の公衆電話が設置されてます。もちろん‘ペイペイ’も無くて決済は現金オンリー!庶民の娯楽は酒場か映画館くらいで、ラウンド・ワンも初音ミクも有りません。
設定は宇宙世紀なのに、ナニこの昭和Deepな世界観は!西武園ゆうえんちの夕日の丘商店街か?

正直、ロボットを除くと「コンバット」や「地獄の黙示禄」かな、と思える舞台設定。視聴中に「これSFだったっけ?」と偶に思い直します。

※ガシャポンフィギュアを使ったジオラマ風ダグラムとブロックヘッドの戦闘シーン。

ストーリーですが、大局にロボット関係ねぇ〜とよく言われてます。

ダグラム第1話の冒頭にいきなり砂漠で朽ち果てた主役機ダグラムが登場、今後の悲劇的展開を暗示しています。最初は全員死亡ENDかと思いましたが、監督がガンダムとは違うのでそこまで酷くは無かったです(ハッピーエンドでもないけど)。

主人公は地球を総べる総裁の息子ですが、親に反抗して植民地の反乱軍に加担します。その為、敵には昔一緒に戦っていた部隊の仲間や義理の兄が登場。色々と複雑な人間関係が描かれます。

何よりもダグラムが幾ら頑張って戦っても大勢に影響が無く、事態が大きく動くのは主人公達と余り関係の無いところで展開してゆきます(切り札のハズの量産型ダグラムも製造されなかったしね〜)。

反乱軍が勢いを付けたのは地球軍所属のデロイア人の反乱が切っ掛け。地球軍と反乱軍の偽りの和解は、反乱軍側の穏健派政治家たちが武闘派を殺害し主導権を握ったため。最後に再蜂起した主人公たちが軍に追い詰められた際に救ったのも政治家たちの判断、と戦争よりも政治が決着を付けるので「ロボット要らなくね」となります。


そんな話なので、ダグラムは只の一兵器として扱われてます。またダグラムにはガンダムのシャアみたいなライバルパイロットは居ません。敵側の主な登場人物は司令官クラスばかりなので直接ロボットに乗って戦うことも有りません。
司令官の立場なんで、個のダグラムを倒す事よりも集のゲリラを潰す事に主眼を置いた作戦を展開して来ます。

たまに敵側のパイロットで仲間の復讐に燃える者やエリート部隊がクローズアップされますが、大体2,3話で退場するのでライバル感は乏しい。
そんな感じで、ストーリーが単調な展開(ダグラムが有象無象の敵と闘って終わり)になることが多く続けて観てると中ダルみします。


主要な登場人物はゲリラ側は幹部クラス、地球側は軍司令官や政治家クラスになります。この登場人物の殆どが敵味方を問わず、個々の理想を持ちながらも現実の壁に阻まれて死んでゆきます。

本来のラスボスとなる主人公の父親の地球総裁は「地球の未来の為を思って行動」しており私欲は無し。しかし死期が迫っており手段を選んでいられない状況下で、非情な人物に成らざる得なかった」という事情があります。
彼は志半ばで病死します。

最終的に一番の悪役になる地球総裁の秘書も「どこまで尽くしても認めて貰えない」ことに絶望して謀略を駆使して私欲に走ります。酷薄で誰からも好かれない性格ですが、有力者の令嬢(主人公の恋人)を保護した事もあり良識が全く無いとは言えない人物。
彼は最後に全ての権力を握るのですが、その途端に切り捨てた部下に撃ち殺されるという自業自得の最期を迎えます。

地球軍側の総司令官は、被支配民デロイア人でありながら地球総裁の考えに共鳴して仕える人物。軍人から政治家になった奸勇と古参の部下からは嘆かれていますが、最期には誇りを取り戻して和平行動を起こします。
しかし時既に遅く暗殺されてしまう。

反乱軍側の指導者であるダグラムを造った博士は、デロイア星と地球が対等な立場(植民地支配の解放)を目指していました。そして地球軍放逐のあと一歩のところで仲間の裏切りに遭い軟禁されてしまいます。
最期は望まない反乱軍再蜂起の旗印に担ぎ出され、撃ち合いに巻き込まれて死亡。

こんな風に殆どの登場人物は志半ばで死亡します。終盤の展開は辛い事ばかりです。リアルロボットに沿ってストーリーもリアル寄りにしたんでこんな風になったんやな〜。ダグラムも活躍するまでワンクールぐらい掛かったし。


主人公は美形なんですが、仲間のゲリラも敵の軍人も殺気立った奴が多いのでムサ苦しい。しかも政治劇を描く場面も多いので、主に登場する人物が幹部クラスか司令官クラスなので敵味方ともオッサン率が半端無い。
新しく出て来るキャラ出て来るキャラが皆オッサン。しかも一話限りのモブキャラかと思ったら後からレギュラー化する地味なオッサンも多数居ます。
話の都合上、登場キャラが一同に会する場面はオッサン祭り。おっさんずラブか、と思うくらいオッサンだらけ。

加えて絶望的にヒロインが全く可愛くない。オッサンが大多数を占める中、主要な女性キャラは二人だけなのに。
メインヒロインである主人公の恋人は頬がこけて不幸オーラ全開の容姿で全くイイトコの令嬢に見えない。
ゲリラ仲間の女兵士は目付きが鋭すぎて女性にすら見えない。
流石にこの二人だけではアンマリだ、と考えられたのか途中でヒロインが追加されました。
同じゲリラ仲間だけど前者と違い元踊り子で明るい性格。なんですが瞳孔が常に開きっ放しの不安を誘う顔です。加えて突然叫び出す(言ってることは正論)キャラなので電波な人物にしか見えない。其の上、この三人目は途中でリストラされます(殺コロされます)。

正直なところ、モブキャラの方が美形が多い。出番が殆ど無い反乱軍に加担して殺された市長の娘は無駄に美人です。あっさり捕まって拷問の末に殺されるゲリラのスパイがレギュラーキャラになるのかと思うほどハンサムだったりします。

頑張ったら美形キャラも登場してるやん。なんで、レギュラー組は小汚いオッサンばっかり採用したんでしょう。

良くこんなんで人気出たな〜と久々に視聴して思いました。

そして2021年、誕生40周年を記念してダグラムのリブート漫画の連載が開始されました。題名は「Get truth 太陽の牙ダグラム」。作者はアニメにもなった「機動戦士ガンダム・サンダーボルト」の人です。
この作者って「サンダーボルト」連載中に腱鞘炎になって休載してたハズなんですが、また緻密なロボットを描いて大丈夫なんでしょうか、、、

第一話にはソルティックやブロックヘッドも登場しています。ダグラムを含めてロボット・デザインはほぼ変わらないようですが、脹脛にスラスターが追加されている等、更にリアル寄りに修正されています。


今回のダグラムのフィギュアは海洋堂のリボルテックシリーズの「ダグラム」と「ソルティック・量産型」「ソルティック・コーチマSP」の三体。完成品フィギュアなので箱から取り出して直ぐに遊べます。しかも流石、海洋堂の商品なのでアニメ通りの特徴的なポーズを付けれるのが凄い。

ダグラムは現在の技術で作り直されたプラモデルが販売されてます。今回はいつもの回顧主義的な昔の再販版では無く、新規販売版の「ソルティック」のプラモデルを付けてます。

※用意した玩具。海洋堂リボルテック・フィギュアのダグラムとソルティック2体。プラモデル版ソルティック1体。プラモデルはいつもの当時モノ(タカラ製)ではなく、最近出たマックスファクトリー版。ダグラムのプラモデルは当時でもかなり完成された造形でしたが、マックスファクトリー版のは更に磨きが掛かってます。

ダグラムのプラモデルは売れに売れたらしいので、旧タカラから出たダグラムのプラモデルシリーズは登場ロボットが全て製品化されてました。ほぼ1話限りの「海戦型」や「都市制圧型」のロボまで網羅。
加えてダグラムの武装強化型が別個で出たり、ソルティックもグライダー装備型やパジャマ装備型などの亜種も販売。
それでもまだまだ売れたのか、ロボットじゃない商品「ダグラムを運ぶトレーラー」や「ロボットを空輸する大型ヘリ」に加えて、現代兵器とほぼ変わらない容姿の「戦闘ヘリ」や「戦車」「武装バギー」までラインナップされてました。
ダグラムのDVD解説書に当時のメカデザイナーの人が書いてましたが「ヘリや戦車は立体化されるとは思わなかったので適当にデザインしたモノだった。プラモデル化で慌てて詳細を設定した」と言われてたくらい商品化予定の無いもの迄が続々と立体化されたようです。

で、今回持参したロボットですが主役機「ダグラム」以外は「ソルティック」祭りになってます。ダグラムを観たら分かるんですが、リアルロボット≒ブサイクが当時の公式だったのでカッコウイイと思えるロボが居ないのです。

「ソルティック」もハエみたいな頭部でイマイチですが、他のロボットは「異様にアゴがデカい‘ブロックヘッド’」「顔が右肩に埋まっている‘アイアンフッド’」「戦車に足が生えている‘クラブガンナー’」と人型か?と疑問な奴が多く「これ、今の子が見てカッコウイイって思うかな〜」と悩んでしまう容姿ばかり。
選択肢が限られる中、「ソルティック」が3体となってしまいました。

※海洋堂リボルテックフィギュア。ダグラム、ソルティック(一般型)。ソルティック・コーチマSP(強化改良型)の3体。見ての通り、良く可動し色々なポーズが取れます。流石、海洋堂!

このダグラム。朝礼における校長先生の挨拶くらい無駄に話が長いので視聴には根気が要りますが、是非とも80年代リアルロボットの雰囲気を味わって欲しいです。