HERO 70's

HERO 70's ; Rainbow-Man , Red-Baron , Mach-Baron


■去年の「バロム・1」に続き、懐かしの70年代特撮ヒーローです。
前回の「バロム・1」と同じく、単体では玩具等が少ないので、今回は3つの作品を選びました。
敵が「死ね死ね団」と名前から逝ってる「レインボーマン」。
主人公は生身で40メートル跳躍可能な「レッドバロン」。
悪のボスの容姿、特に髪型と髪色が凄い「マッハバロン」。

今回用意した玩具(ミニ超合金マッハバロン、カプセル超合金版マッハバロン、マッハトリガー)及びDVDです。


まずは「愛の戦士レインボーマン」。状況に応じて七つの姿に変身するヒーローです(下の写真のフィギュアは1体欠品なので6体しか居ません)。

レインボーマンは「あのくたらさんみゃくさんぼだい」とお経(字幕が流れます!)を唱えて変身する‘ヨガ’のヒーローなんです。‘ヨガ’は極めたら美容健康だけでなく、超能力まで使えるようです。
そういや、某格闘ゲームでも‘ヨガ’の達人キャラは、火を吹いたり、手足が伸びたり、あまつさえテレポートしたりとチートな能力全開でした。やっぱヨガってスゲ〜な。

あと主題歌の♪インドの山奥で修行して〜ダイバダッタの魂宿し〜♪と言う部分の替え歌が数多く創られて一時話題になりました(私のトコでは♪インドの山奥で〜デンデン虫カタツムリ〜リンゴは真っ赤〜母ちゃん怒りんぼ〜ボクは泣いちゃった♪でしたが、地方によって歌詞が違うそうです)。

この作品、改めて観ると凄いです。「愛の戦士」とか言ってるクセに、主人公は「愛」をどっかに置き忘れたようで容赦が無い。ワンクール終了時点で300人の敵兵を屠ってます(第2クール冒頭で敵のボスがお葬式してます)。敵なら女性でも躊躇無く殺めます。
敵の倒し方も凝ってて、地面に潜み土の中に引き摺り込んで圧殺、脳天に稲妻を直撃させ爆殺、女幹部の両目にナイフを刺してからのビームで惨殺とヨリドリミドリミナゴロシ。
そもそも敵には怪人が居なくて普通の人間ばかりです。銃を持ってる奴も居ますが、下っ端の大半はボーガンや投げナイフ程度の軽武装。
それなのに主人公は‘ヨガ’の超能力を使って片っ端しから鏖殺していきます。

主人公は実家暮らしで母親と妹と同居。その所為で、家族は何回も拉致されたり人質に捕られたり、挙句に家に火を点けられたりと災難続きです。それでも母親も妹も家から逃げ出しません。普通、こんだけ被害に遭ったら安全を優先して、田舎の親族の元に身を寄せるとか防護策を講じるもんですが。
主人公の家族は襲われても火を点けられても、次の日から平然と日常生活を送ってます。また母親は命よりも食料の物価が上がった事を心配してます。流石、昭和の肝っ玉母ちゃん。少々の事では動じない(普通に大惨事だと思うけど)。

あと主人公の家族ですが、父親失踪中、妹は事故で脚が不自由、主人公はニート、母親が独りで切り盛りしているオニギリ屋が一家の生命線、となかなかに絶望的な家庭環境。なのに主人公が店を手伝ってる描写は有りません。「平成仮面ライダーの主人公はニートが多い」と話題になっていましたが、昭和70年代から既にニートの主人公は存在していました。

そもそも主人公がインドに渡航した目的は「プロレスラーになって一山当てるための修行」だったのに、トチ狂って「レインボーマン」になったので無職のまま帰ってきました。当時は壱ドル300円時代のハズ、渡航費用はバカになりません。
そして劇中では「あれから一年経った」とか「666日が過ぎた」と説明が入るので、少なくとも4、5年はニートのまま過ごしています。
レインボーマンであることは家族にも秘密にしているので(敵には早々に正体がバレてるのに!)、周囲から観ればトンデモねードラ息子です。それなのに町内では子供から老人にまで慕われて、ヤクザを改心させて「兄貴」と呼ばれ、許せないことに恋人まで居ます。母親もずっとブラブラしている息子を叱ったりしません。収入は無いのに人望だけは有るようです。
う〜ん、家庭内外共に大惨事のような、、、。

大惨事と言えば、敵のボスも負けてません。ミスターKというサングラスを掛けた渋い中年がボスです。LEONの表紙を飾れそうな小洒落たオッチャン。普通はボスと言えば、ショッカーの首領みたいに姿を見せず前線には出ないものですが、彼は違います。矢面に出捲りです。自分で車を運転して銃をぶっ放す行動派。
しかし、あくまで普通の人間。なんで止せばイイのに、レインボーマンと直接対決する度にボコられてます。
ヒステリックでちょっとのミスで部下を処刑する残虐非道を絵に描いたパワハラなボスですが、何度もボコボコにされ挙句に片腕を失っても、めげずにレインボーマンと直接対峙する姿勢は褒めて上げたくなります。

今回持参したDVDは第2クールに当たる「M作戦」前後編です。
レインボーマンの敵「死ね死ね団」は立案遂行能力に欠けるのか作戦期間が無駄に長い。ショッカーなら1話で終わる作戦を、延々と13話掛けて展開します。つまり全52話あるのにたった4つしか作戦は実行出来てません(当然、すべて失敗)。
これではボスを含めて組織管理能力の欠如が甚だしいと言わざる得ない。

因みに、M作戦は当時子供だった私には意味が分かりませんでした。大人になって改めて鑑賞し、やっと理解した次第です。
作戦内容は、大量の偽札を発行、新興宗教を使い日本中にバラ撒き、貨幣価値を失わせて市場を攪乱、ハイパーインフレを引き起こす、という兎に角回りクドイです。こんなん小学生に理解出来るか!

正直、第2クールはM作戦どうこうよりも、初登場する7人の怪人たちが見所です。怪人と言っても、みんな普通の人間で殺し屋って設定なんですが。
ただ、彼らの容姿が凄いです。DVDのリーフレットとか読むと「怪人の着ぐるみ制作が間に合わず、初期は市販の怪物マスクで代用した」と記載されてますが、一体どの怪人が間に合ったのか分からないくらい低クオリティの連続です。
どう見ても市販の「ドラキュラマスク」を被ってる奴とか、「オッサン顔マスク」の口の周りにマジックでグルグルとヒゲを書いただけの奴とか(たぶん衣装の製作時間5分くらい)、単にタキシードとマントを素顔で着てる奴とか(衣装製作時間ゼロ)、全員揃って学芸会レベルの出来でした。
画面を見て「これはヒドイ」を連発すること間違いなし。

この低予算全開の怪人達のトリは大月ウルフ演じる電気人間エルバンダです。素顔にピチピチの全身タイツを着て電気をウマウマと喰うエキセントリックな怪人。強敵ですが、マジで変態にしか見えません。
でもそこは流石の大月ウルフ、怪演技のインパクトが強すぎて安っぽい衣装とか全然気になりません。やはり昭和特撮における外国人悪役と言えばこの人しか居ません(あと肉体派悪役と言えばストロング金剛、頭脳派悪役と言えば天本英世)。
因みに、大月ウルフは藤子ヘミングウェイの実弟だそうです。確かに、二人揃ってゴッツイ顔してます。

DVDの特典映像で当時の特撮監督が「とにかくカネが無かった。自宅で段ボールを使って撮影のミニチュアセットを作ってた」と証言しています。
それでも「カネが無くても、良いモノを創ろうと全員が頑張ってた」と語られるシーンに夢と希望に溢れてた昭和70年代の匂いにノスタルジーを感じます。

敵の「死ね死ね団」というネーミングセンスも凄いですが、挿入歌「死ね死ね団のテーマ」も逝ってます♪死ね死ね死ね死んじまえ 黄色い猿をやっつけろ♪と「日本死ね」並みの暴言の連呼です。
特にサビのコーラスで甲高い女性の声で♪死ね(ウー)死ね(アー)死ね死ね死ね♪と合いの手の入るトコは何度も聞いてるとクセになります。
あと、終わりの歌では「あいつを殺せ〜♪」になります。子供向けの歌なのに「死ね」とか「殺せ」とか物騒にもホドがあります。
挿入歌については他にも迷曲が有ります。「ヤマトタケシの歌」という主人公の心情を歌詞にしたものですが、内容が「僕だって人間さ お金が欲しい」とか「恋もしたい」「遊びたい」と煩悩駄々洩れです。
「人類愛に目覚めて」レインボーマンになったのに「お金が欲しい」はアウトやろ。流石に劇中では余り流れなかったんですが、インパクトが大き過ぎて子供時代の私の耳にこびりついていました(この歌のせいか主人公はホントに嫌々戦っているようにしか見えません)。


「スーパーロボット レッドバロン」実写版ロボットモノです。スフィンクスみたいな顔に真っ赤なボディが印象的です。あと「レッドバロン」だけでネット検索すると「中古バイク屋」が多数表示され、次に第一次世界大戦のエースパイロットの逸話が出て来ます。

因みにシリーズになっており「レッドバロン」(写真右側)「マッハバロン」(写真左側)「ガンバロン」とありますが、レッドバロンとガンバロンはスポンサーの倒産で打ち切り、マッハバロンは番組改変の余波で打ち切りと不遇のシリーズです(お話がちゃんと完結してるのはレッドバロンのみ)。

レッドバロンの特筆すべきところは、主人公のロボへの搭乗方法です。
レッドバロンの操縦席への入口は首のトコにある設定(普通にノブのある扉だったりします、せめて自動ドアにしてあげて)。全長40メートルのロボに乗り込むなら、脚からエレベーターで上がるとか、戦闘機で飛んで乗り込むとかの方法が考えられます。
が、レッドバロンは主人公が‘生身’で‘そのままジャンプ’して乗り込みます。全長40メートルのロボの首のトコまで「ヤーツ」と飛び上がるのです(そして普通にガチャとドアを開けて入る)。どう考えでも「スーパーロボット」じゃなくて「スーパーマン」です。
この主人公の‘人外ジャンプ力’については特に説明がありません。誰も驚かないので、当たり前体操の様相。ライダーキックも真っ青な脚力です。これなら生身の蹴りでも敵のロボットを倒せるんじゃないかと思うのですが。

あと主人公達は地球防衛隊みたいなもんですが、何故か秘密基地は自動車修理工場の休憩室です。隊員のミーティング時は、ちゃぶ台みたいな低い作戦テーブルを囲んで胡坐かいて座ってます。其の上グランドピアノまで置いてます。たまに隊長が弾きます。
カモフラージュの為に自動車工場は分かるのですが、全然秘密基地っぽくないのは夢が有りません。


「スーパーロボット マッハバロン」。名前から分かるように「レッドバロン」の第二作です。が、物語としては独立しており全く繋がってません。

これは大好きでした。子供の頃、大きなソフビ人形を買って貰ったのを覚えてます。レッドバロンはモッサリした容姿でしたが、マッハバロンは洗練されたスタイルで恰好良い。

敵のボスの容姿も別の意味で洗練されてます。服は黒一色で地味ですが、特徴は一度見たら忘れられない凄い髪型。「怒髪天を突く」を絵に描けばこうだ、とばかりに逆立った大量の髪の毛は天井まで達してます。しかも、感情によって髪の色もルミナリエのイルミネーションみたいに変わるので見てて飽きません(因みにレッドバロンの敵総統役も同じ俳優さん)。

マッハバロンは良く壊されます。腕が吹っ飛ばされたり、穴が開いたりと、前作レッドバロンと比べてもよりロボットらしい表現でグッドでした。

しかし、改めて観ると主人公の迂闊さに苛々します。何度も命令無視してはピンチに陥ります。負けそうなった挙句に逃げ帰った事で、敵に秘密基地の位置がバレてしまいます(しかも開始2話目で)。その後、何度も敵に秘密基地への侵入を許します。脇の甘い主人公が敵を連れ帰っちゃった事も幾度かあります。
そもそも秘密基地がバレたのは主人公の迂闊な行動が原因なのに、博士も他の隊員も大人なのか、単に忘れてるだけなのか、誰も彼を責めません。普通なら叩き出されても文句言えないレベルのチョンボです。

あと秘密基地はレッドバロンの「自動車工場の休憩室」と違って立派な「海底基地」になってます。レッドバロンには無かった航空戦力や潜水艇も有ります。メインの隊員以外にも保安部隊や整備部隊の人員も多数。
が、基地のインテリアが狂ってます。作戦指令室の入口には天使像が飾ってあり、観葉植物も豊富。極め付けは椅子で赤や黄の原色で背もたれがピースサインのカタチ(岡本太郎がデザインしそう)。あと極秘回線の連絡機械が普通の黒電話だったりします。他の部屋は全て殺風景なのに指令室だけはリビングかよ、って内装。
こんなフザケた部屋から、博士は命の遣り取りをしている部下に命令を出すので、なんとなく主人公が反抗してしまうのも分からない気はしない。
それと防衛隊の名前が「キス」です。隊員は「イエッサー」の代わりに「キッサ―」と応じます。もうちょっと他の名前にならなかったのかな〜。
因みに博士役は帰ってきたウルトラマンの主役・郷秀樹役の人。

レッドバロン、マッハバロンを通じて隊員bQは同じ俳優(加藤寿)が演じています。ブルース・リーが死んだ後に無理矢理編集して作られた映画「死亡の塔」にも出演していたアクション俳優さんです(チョイ役だったけど)。
この人と仮面ライダーV3の宮内洋が私の中では最高に恰好いい特撮俳優です。
因みにブルース・リーの映画「死亡の塔」は観る必要が無いほどツマラナイんですが、‘アラ探しごっこ’には最適です。無理矢理編集しているせいで、ブルース・リーの服がアップとロングで色が変わったり(何回かあります)、意味も無く茶を飲むシーンが入ったり、カンフーアクションになると一切アップ画面が入らなかったりと、みんなで粗探しするなら途端に楽しい映画に変わります。